テスコのスペクトラム5を池部楽器店が実用的な仕様で復刻

レビュー

日本では60年代のはじめに後に第一次エレキギター・ブームと呼ばれる音楽とギターのブームが巻き起こった。それはベンチャーズなどエレキギターが主役となるブームで、テスコやグヤトーンなどのギターメーカーが月産数万本という本数のエレキギターを生産し、日本国内、北米を中心とする海外への輸出を行っていた。ただし、それらのギターは主に1万円前後の価格帯のものが中心で、当時のフェンダーの最高級ギターであったジャズマスターの定価が約20万円であったことを考えると、日本製のギターはまだ製品的に海外の有名ブランドに比べられるレベルのギターではなかった。その中で輸出にも強かったテスコが3万円台の価格設定で、世界をターゲットに開発したスペクトラム5は、ギターとして本格的な仕様と独創的な内容をもつギターとして66年頃に登場し、現在でもコレクターの間では人気が高い伝説のギターである。

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TEISCO IKEBE ORIGINAL Spectrum 5 価格=185,000円(税抜)

 

今年9月に創立40周年を迎え様々なオリジナル製品をリリースしている池部楽器店から、ショップ・オリジナル品として、スペクトラム5が限定再生産された。ほとんどのパーツが現在入手困難であるため、ボディ形状からブランドロゴに至るまで、多くのパーツがオリジナル・モデルを採寸し、型を起こして製作されている。

■美しい曲面を描くジャーマンカーブ

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▲ボディのアウトライン部分がカットされ、隆起した部分の立体的なカーブが非常に美しい。60年代に流行した“ジャーマン・カーブ”と呼ばれる。

スペクトラム5は、60年代のギターに流行した“ジャーマンカーブ”と呼ばれるボディ・カットが大きな特徴となる。ボディエッジは部分によってRが流れるように大きく3次元的に変化することで、他のギターでは見られない高級感と美しさを備えている。またメタリックやパール系を中心とした8色のカラー・バリエーションがジャーマンカーブをよりグラマラスに演出する。ボディにマホガニー材(タバコサンバーストのみがアルダー材)が使用され、ボディ・バックも美しい曲面で仕上げられている。

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▲曲面が美しいボディバック。塗装の高い質感も感じられる。

 

■ネックとヘッドの優れたデザイン

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▲独特の形をしたポジション・マーク。メイプル・ネックはゆるやかなCシェイプで弾きやすい。

ネック材はメイプルで、グリップはゆるやかなCシェイプ。フィンガーボード材にはローズウッドを使用し、スケールは648mmを採用。当時と同じ0フレット仕様だが、機能性を重視してトラスロッドはあえてBi-Flex Truss Rodを採用。あらゆるネック・トラブルに対応できる現代的な一面も備えている。

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▲弦を直線に張ることができる4:2の配置のペグ。非常に合理的で美しいデザイン。60年代にしては先進的であった。

ヘッドストックは60年代とは思えないほどモダンかつ合理的でバランスがとれたデザインで、4対2のチューナー配置も個性的だ。これは6本の弦全てがブリッジ・サドルからチューナーポストまで直線になる合理的デザインで、1弦と2弦ポストはヘッドの切り込み部分のやや内側に入っている。ピックガードと同じ素材による3プライのプラスティックが装飾がセットされ、さらに立体的な“TEISCO”のバッジもオリジナル・モデルをリアルに再現している。チューナーはグローバー・タイプで、実用面での信頼性は高い。

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▲60年代のオリジナルでは巨大なカバーがヘッド裏を埋め尽くしていたが、今回は信頼性が高く、チューニングが安定するグローバー・タイプのチューナーを採用している。

 

■スプリット・タイプのPUとPUレイアウトが作り出すステレオ・サウンド

60年代のオリジナルのスペクトラム5は、スプリット・ピックアップが個別の6つピックアップとして搭載され、それぞれの配線をプリセットで組み合せるという独特の仕様をもっていた。が、それはサウンド面で効果が薄く、今回は配線については現在の音楽に対応すべく、全てリニューアルされている。

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▲四角いポールピースを持つスプリット・ピックアップ。今回、外観は復刻したが、ターン数を見直すなどして、パワフルなサウンドまでを生み出すようサウンドはリニューアルされた。

今回のスペクトラム5は3つのスプリット・タイプのピックアップと5+1の計6つのスライド・スイッチ、ステレオ・アウトによって生み出される豊かで幅広いサウンドメイクが最大の特徴。ピックアップは、4~6弦用と1~3弦用が分かれるスプリット・タイプ。角形のポールピースをはじめとする個々のパーツはオリジナルのルックスを踏襲しているが、内部はコイルのターン数などを変更した新設計を採用。よりパワフルなサウンドも生み出せる。
6つのスライドスイッチのうち左の5つに番号と色が振り分けられている。光の要素となる色を5つのスイッチの色で表現しているが、それがSpectrum 5の名称の由来となっている。

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▲光の要素をイメージしたスライド・スイッチ。今回はすべてがスライドスイッチとなり、演奏上効果がある配線にリニューアルされている。

5つのスイッチは以下の内容
5/青=Front/Pair
4/緑=Center/Pair
3/黄=Rear/Pair
2/橙=Phase
1/赤=Phase
青、緑、黄の3つがピックアップ・セレクター、橙と赤がフェイズ・スイッチ。これらのスイッチはピックアップに向かってスライドさせた状態がオンとなる。写真の場合フロント(フェイズアウト)とリア(フェイズイン)のミックスだ。
このスライドスイッチの2と1は60年代のオリジナル・モデルはラジオスイッチと呼ばれる片方をオンにするともう片方がオフになるスイッチであった。今回はスライドスイッチに変更することで故障の可能性が減少と演奏の利便性が高まった。

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一番右のスライドスイッチは“MONO”と“STEREO”のセレクター。このギターはふたつのアウトプットを装備し、2つのノブはともにボリュームで、トーン・コントロールはない。MONO時には左のノブだけの1ボリューム仕様となり、STEREO時には単に同じ音が2つのアウトから出力され、それぞれの出力のボリュームを個別に調節が可能。

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▲2つのコントロールはともにボリュームでトーン・コントロールは搭載されていない。他の文字も同様だが、ギターに書かれた文字は、一般のギターとは逆側から読む独特の仕様だ。

■新たに用意されたブリッジと復刻されたトレモロブロック

今回は機能性を考慮してチューンOマチック・タイプのブリッジを採用。このブリッジは駒の部分にローラーを使用し、トレモロ使用時によりワイドで安定したトレモロ効果とチューニングが得られるようにアレンジされている。板バネのトレモロブロック、ブリッジカバー、カバー上のTESCOのバッジなどもレプリカを新たに製作し、当時の高級感を再現している。

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▲60年代のモデルではブリッジの駒が精度が低く欠点となったといわれるようだが、今回は実用性の高さが大きなテーマであり、ブリッジ部分にローラーをもつチューンOマチック・タイプのブリッジを採用した。

 

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▲トレモロは板バネ式、今回はトレモロ・ブロック、カバー、TEISCOのバッジを含めて新たに復刻されたもの。削りだしやベンドなどの方法で非常に手間をかけ復刻された。

 

■選べる8色のカラー・バリエーション

今回のTEISCO IKEBE ORIGINAL Spectrum 5ではMetallic Blueの他に、Metallic Red、Pearl White、Clear Yellow、Surf Green、Shell Pink、Autumn Orange、Tabaco Sunburstの8種類のカラーをラインナップ。全てのギターにブラウンのオリジナル・ハードケースが付属する。価格はいずれも185,000円(税抜)であるが、カラーによって生産されている数が異なるので、お気に入りのカラーを早めにチェックすることをお薦めする。

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▲ブラウンのしゃれて豪華なハードケースが付属している。

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《SPEC》
TEISCO IKEBE ORIGINAL Spectrum 5 価格=185,000円(税抜)
■BODY: Mahogany (※Tabaco BurstのみAlder)
NECK: Maple
FINGER BOARD: Rosewood
INLAY: Teisco Original
SCALE: Long (648mm)
BRIDGE: Teisco Original
NUT: 42mm
FRET: JESCAR
PICKUP: Teisco Original
CONTROLS: 1Volume, 1Tone, 5 Slide Switch, Stereo/Mono Switch
ハードケース付き
問い合わせ :㈱池部楽器店
リボレ秋葉原店 TEL:03-3862-0069
プレミアムギターズ TEL:06-6253-0069

 

2015/05/15
※価格を含む掲載内容は2015年5月現在のものです。

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